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シェフの動きを見ているだけでも楽しい

 酒飲みってさあ、って酒飲みの私が言うのもなんですが、きりがないというか……。散々飲んだあげく、帰りがけに、じゃ、締めにもう1杯などということを平気でつぶやくのですよ、これが。
 「だいたいこの不景気で、最近は天文館も人が少なくなっちゃったから、我々のような飲兵衛が少々頑張らないと地域経済も盛り上がらない」
 などと厚顔無恥な雄叫びを上げながら、人通りの少なくなった歩道をよんごひんごしながら歩くのです。時間でいうと午前1時とか、2時とか……。

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じゃあ、1杯だけということで。つまみは無しね

 この時間になると、開いているのはラーメン屋や24時間営業の大衆食堂に牛丼のチェーン店くらいでしょうか。
 「いやあ、この時間はラーメンは健康に悪いし、大衆食堂じゃな。牛丼もきついし」
 などとキョロキョロしながら歩くのです。もちろんまだ灯を落としていない看板を探しながら。するとけっこう頑張って開けているお店があるんです。ええ、看板の灯を落とすの忘れて後片付けをしているお店を含めて……。まさに「餌食」ですね。

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ああ、やっぱり鴨のコンフィを。せっかくですからねえ

 昨夜の餌食、じゃなかったお店は、「ビストロ・エッサンス・ド・タニヤマ」。二官橋通りと山之口本通りの交差点、ケーキ屋さんの2階にあるフレンチのお店です。信号待ちをしていて、ふと見上げると、まだ照明もガンガン点いてるじゃないですか。大きな窓なので中の様子も。お客さんはいるのかどうかわかりませんが、とにかく階段を2階へ。
 こちらは午前2時までの営業。まだもう少し間がありますか……。
 「いらっしゃいませ」
 すでに後片付けにかかっていましたが、快く迎え入れていただきました。
 「すみません、ワインを1杯だけ」
 「承知しました。じゃあ、自家製のビーフジャーキーでも」
 「飲み屋代わりに使っちゃってごめんなさいね」
 「いいええ、いいんです。気軽にのぞいていただけるのがありがたいです」
 酒飲み冥利に尽きる言葉です。

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てなことで、まだ飲むんだ。どっちが餌食!?

 カウンターメインの15人入れるのかなあ、13人くらいかなあという小さなかわいらしいお店ですが、オープンキッチンで自分がオーダーした料理がどんな手順で出来上がるのかを楽しみながら飲めるので、私は好きです。
 「1杯ですむかなあ」
 と悩んでいると
 「じゃあ、デキャンタでどうぞ。3本になるとボトル1本ですから」
 そうなると、何かつまみたくなるものなのですよ。
 「じゃあ、夜中ですけど、鴨のコンフィを」
 「かしこまりました」
 結局暴飲暴食は夜中も続くのです。餌食になったのは、どっちでしょう!?
 カウンターを挟んでいろんなことを話して、笑って、ああ、きっとビストロってこんな感じなんだろうなあと思わせてくれます。
 大きな窓から見えるのは信号とタクシーのテールランプだけ。とても寒そうですが、ここは温々。
 夜中にほんとにありがとうございました。
 天文館の夜は楽しく更けていきます。